ぽっけのおへやプログラム:Eric Carleの絵本を題材に子どもの感性と細かな運動スキル(Fine Motor Skill)を育む

NPO法人ぽっけのおへやの発表会で毎年恒例のプログラム、Eric Carleの絵本を題材にした年少、年中の発表。2019年に小学校テーマ別英語教育研究会ESTEEMで研究発表したものをまとめてみました。

園児が絵本を模写をした自作の紙芝居を年少では日本語で、年中では英語で発表します。この紙芝居を作る行程ではFine Motor Skillと模写の効果が見られます。

Fine Motor Skill:モンテッソーリが提唱する小さなものを抓む、切る、指先で抓む(pincer grasp)など、非常に正確な運動動作のこと。細かい運動のスキルの発達は後天的でトレーニングをしないと発達しないとされる。体から受けた刺激を脳で受けとり、活発に活動させます。
    模写:作者の意図を体感したり、作者の立場で理解できます。再現のための知識・技量が必要です。

    1、年少 日本語発表

    目標はクレヨンを使っての模写、翻訳された豊かな日本語表現に触れ、人前で発表すること。動きのある作品は紙芝居でなくお面型になっています。
    いきなりですがクイズ!これはなんの動物でしょうか?
    研究会発表では大学の先生が即答してました。
    正解は「できるかな?あたまからつまさきまで」のラクダ。このページで重要なのは「膝をきゅっと曲げられます」という動き。そこはきっちりと前足だけ膝を折っています。絵本と比べてみると3歳でもよく観察して模写ができることが分かります。

    2、年中 英語発表

    年少の時に使用したのと同じ絵本を使用します。目標は英語での発表とより作者に近い技法に挑戦すること。
    エリックカールのように絵の具を使って紙を作るところから始めます。ぽっけのおへやには三原色プラス黒、白しか絵具がありません。自分で色味や絵の具の粘度や水の量を調節します。そしてブラシストロークや、クレヨン、重ね塗りなど、よく観察して必要な色の紙を必要な枚数作ります。年中になるとこういった筆やへらなどの様々な道具を駆使することができます。
    絵の具はマーカーやクレヨンに比べてストロークが太いので子どものイメージしたものが消えてしまう前に紙に描きやすいということで、自由時間にいつでも使えるようにしています。  
    完成した紙は色別にしまいます。子供でも管理がしやすいよう半分に切ったA4用紙用の封筒や透明のフィルムの袋に入れて見やすく、しまいやすくしています。


    年少時にはアウトラインを撮るので誠意一杯だったのと比べると、細かい毛並みや体のパーツが思い通りに作れます。できあがった紙は、いってみればパレット。
    まずは週3の英語レッスンの時間で読み聞かせをし、シャドウィングを促します。シャドウィングとは聞いた英語を後から追いかけて発音する同時通訳の練習としても有名な学習方法です。多くの生徒が様々な場面で、特に英語のレッスン中に自然にやっています。ここでリズムや日本語にはない抑揚を捉えます。子供達は全体的に覚えていくのが得意です。
    英語のセリフを入れるのは実は一番簡単な作業かもしれません。その理由の一つがクラッシェンの言う「理解可能なインプット」だと思っています。すでに年少時にお話はよく理解していることで、例え外国語でも理解ができ容易に理解ができます。第二言語学習での一番効果的なインプットだとされています。

    この発表の楽しいところは年少と年中で比較をして、
    共同作業、自主的なアイデア、作品、自信、二つの言語、、、
    1年でどんな成長をしたのかが同じ物差しで見えることです。

    このプログラムを初めて今まで2名、英語が母語のアメリカとインドの外国人園児が取り組みました。今、年少のMくんは3月に年少々で入園し、初めての日本語を学んでいる中での発表でした。そんな彼でも馴染みある「From Head to Toe」を「できるかな?あたまからつまさきまで」という日本語の内容をとれるのに、特別なヘルプなしでやり遂げました。その理由は。。。

    日本語と英語で発表することは二つのことができるようになると言うよりは、カミンズの氷山に例えた言語の表層面と深層面に似ているなあと思っています。見かけは日本語の発表と英語の発表という2つ言語活動がありますが、絵本そのものの理解は見えないところで完全に一致している様子です。

    例えば、”The Very Busy Spider”の練習の初めの頃ではgruntedやbleatedなどの聴き慣れない動詞が出てきます。ちなみに日本語は「誘いました。」子どもたちが練習する時も最初は「Oink oink said the pig.」と自分知っている動詞を入れています。原文を読むことはできていなくても、話を理解しているからか意味が通じるようにしていました。Shadowingしていくうちに原文との違いに気付いて自然と身につきます。grunted は豚がOinkっていう時のことなんだといった感じ。

    この発表を終えて自信満々な彼らはその勢いでPOKKE ENGLISHで英語を勉強しています。まさに情意フィルターが下がった状態です。不安な気持ちやネガティブさなどはできるはずのものができなくさせてしまいます。対して成功体験や自信、楽しんだりすることは最大のモチベーションとなり、能力を100%発揮させます。
    先ほどエリックカール が子供にこれなら自分もできると言われるのが嬉しいと言っていましたが、まさに彼の画風やアイデアはとても子供達にとってフレンドリーなのがよくわかります。
    この作品を入れるための額を100円ショップで買うのが流行ったり、数年経っても作品を全て綺麗にとっておいたり。。。愛着がすごい!


    参考文献
    Eric Carle “The Very Hungry Caterpillar” World Publishing Company (US)
    (はらぺこあおむし 訳・もり ひさし 偕成社)
    Eric “Carle The Very Busy Spider” Penguin Young Readers
    (くもさんおへんじどうしたの?訳・もり ひさし 偕成社)
    Eric Carle “From Head to Toe” Harper Collins Publishers
    (できるかな?あたまからつまさきまで 訳・くどう なおこ 偕成社)
    Bill Martin Jr / Eric Carle “Polar Bear, Polar Bear, What Do You Hear “ Puffin Books
    (しろくまくん なにが きこえる? 訳・おおつき みずえ 偕成社)
    偕成社エリックカールスペシャルサイト www.kaiseisha.co.jp/special/ericcarle/
    アレン玉井光江(2010)『小学校英語の教育法 ー理論と実践』

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